大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和34年(く)78号 決定

少年 T(昭一五・一・二七生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

申立人抗告理由の要旨は、

申立人は、昭和三四年七月二四日横浜家庭裁判所において、窃盗保護事件について、特別少年院送致の旨決定の言い渡しを受けたのであるが、自分はこんな重い処分を受ける程悪いことはしていない。自分は少年院に入らなくとも絶対に真面目になる自信があり仕事もあつて、真人間になる気で家に帰り父母に心からお詫して真面目に働き出した時に捕つた。自分にとつてこの機会を逃がして少年院に入つてしまつては、一生更生することはむつかしくなつてしまう。父母も今がいちばんよく面倒を見て呉れるので、今一度審判していただいて、特別少年院送致決定を取り消して、在宅試験観察か教護施設に送致の処分が自分に適当と思うので抗告に及んだ次第である。

というのである。

よつて審究するに本件及び申立人の非行前歴に関する記録に徴すれば、申立人は昭和三三年八月二六日道路交通取締法違反事件で横浜家庭裁判所において審判不開始決定、同年一二月三日同裁判所において強盗未遂、窃盗事件で横浜保護観察所の保護観察に付する処分を受け、帰宅して農業の手伝をしているが、同月末頃突然家出して翌年一月十日頃家に戻り、同年三月またまた家を飛び出して中伊豆の飯場で窃盗を働き同月二六日静岡家庭裁判所沼津支部で不処分の決定を受けて帰宅した。そして沼津の方に仕事がみつかつたというので両親の承諾を得て二、〇〇〇円を貰つて出掛けたが、途中で気が変り沼津には行かないで横浜市内の簡易宿泊所に舞い戻つて間もなくKと知り合となり、同年五月一三日から同年六月七日まで前後四回にわたつて本件犯行に及び、同月一七日帰宅したところ翌日警察に検挙されたものであつて、申立人のいうように真人間になる気で家に帰り父母に心からお詫して真面目に働き出した時に捕つたものとは認められない。一件記録とくに本件における申立人に対する鑑別及び調査の結果に徴するも、申立人は非行が習慣化しつつあつて自己中心で内省力に乏しく更生意欲は認められず、もはや在宅処遇の段階ではなく、その性格を矯正するためには同人を特別少年院に収容保護することが適切と認められ、記録を精査するも原決定に法令違反又は事実誤認はなく、またこれを著しく不当な処分と目すべき跡は発見せられない。であるから申立人の抗告は理由ないものとして排斥するの外はない。

よつて少年法第三三条第一項を適用して本件抗告を棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長判事 尾後貫荘太郎 判事 堀真道 判事 足立進)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例